仕事:転職理由

そもそも、なぜ転職を決めたのか、という点について記載します。

 

「何で、大手人材会社を退職して、リスクの大きいベンチャー企業に転職することを決めたの?」と良く質問を受けるので、その回答です。

 

まず、簡単に私の経歴だけお伝えさせていただくと、2社目では、人材業界内では一般的に「大手」と呼ばれる会社に在籍しながら、人材紹介業に取り組んでいました。2008年4月に入社してからの約8年間、人材紹介業における個人側の転職支援を行うコンサルタントとして従事し、最後はプレイングマネージャーとして自チームを担当していました。目の前のお客様の転職支援することはもちろんですが、法人企業の採用成功のための提案/組織マネジメント/後輩の育成・指導/中途・異動者向けの社内研修/Webコンテンツの記事制作/新卒採用の面接、など様々な業務に取り組む機会を与えてもらいました。

 

で、正直な話、LiBへの転職を決めた今でも、「一般的な」視点で考えると、転職しない方がメリットは多かったと思っています。

 

【転職しないメリット】

・業界としても会社としても、大きく成長しているフェーズである点。

 

・人材業界の中でも知名度があり、様々な施策実行から日々の業務に至るまで、競合他社と比べて、優位性を持って事業を進められる点。

 

・人間関係が良好で、かつ、慣れ親しんだ職場であり、社内の協力者が非常に多い点。

 

・組織の規模が大きく、自分自身の仕事内容から違う事業に興味・関心が生まれた場合でも、社内異動で新たなチャレンジができる機会が多い点。

 

・社内には、様々なプロセス数値を分析するためのデータが多く、自分の取り組みがダイレクトに数値化され、PDCAサイクルを月次・週次・日次で自己管理する体制が整っている点。

 

・評価制度として、実績と評価が適切に連動する仕組みが整っており、かつ、給与としても反映される点。

 

・残業時間が0ではない一方、社員に過重な労働時間を強制させるような職場では無い点。

 

・会社としての資金も潤沢で不況にも強い点。

 

・年次に関係なく、主体的に意見をすることが歓迎され、かつ、取り入れられやすい点。

など多数。

 

その上で、転職を決意した理由は、2点。「一般的にどうか」、ではなく、「自分として何を大切に生きていきたいか」を考え、転職を決めました。

 

【転職するメリット】

・1点目は「個力」を鍛えていきたいと考えた点:

シンプルに、雇用されている会社の力に頼らずに生きていきたいと思いました。もともと、学生時代から漠然と持っていた思いではありますが、2008年に未経験で人材業界にチャレンジした時と、2016年現在、社会が劇的に変化し、その思いがより強固になりました。

 

日本の高度経済成長を支えてきた年功序列や終身雇用制度の崩壊、2030年に人口の約3分の1が65歳以上になる日本の超高齢化社会の到来、上海をはじめ日本よりもはるかに物価が高いアジア諸国・地域の台頭、ドイツでのインダストリー4.0を始めとした人工知能などのテクノロジーの進化、自動運転車・ドローンの実用化、米国の一部の有名大学では記憶よりも情報活用が重要という判断からカンニングOKの入試を開始、・・・など社会全体は大きく変化しました。

 保育園児がタブレットyoutubeを見て言葉を学習し、小中学生がスマートフォンを持ちアプリを使いこなし、社内外のビジネスでのコミュニケーションツールは電話やメールからSNSやビジネスチャットツールに変化し、ECサイトで注文したものは当日中に自宅に届くようになるなど、ライフスタイルも大きく変化しました。

 LinkdinやIndeedといった海外で成功しているHR企業が日本にも進出してきており、テクノロジーによるマッチングの精度が上がり、日本国内でもダイレクトリクルーティングやリファーラルリクルーティングという採用の成功パターンが増え始め、採用手法も大きく変化しました。

 

 なんというか、これまでの常識が本当の意味で通用しない世界観になってきました。そんな中で、私が8年間在籍してきた会社は、人材業界の中では、ブランド力があり、組織力があり、長年培ってきたノウハウがあり、尊敬できる社員が多い、という非常に良い職場環境でした。正直、この状況は、競合他社から見れば、非常にうらやましい事業戦略・組織体制だと思います。ただ、これからは誰も経験したことの無い時代が確実にやってくることが想定される中、雇用されている会社の力に頼らず生きていきたいと考えている自分としては、会社の知名度や仕組みに頼らない環境でチャレンジしていきたいと思い、転職を決意しました。3年前の29歳のタイミングでは情けない話ですが正直まだ自信が無く、3年後の35歳のタイミングでは居心地の良い環境を離れる決心がつかなくなると思い、「個力」を鍛えたい、と考えこのタイミングでの転職となりました。

 

・2点目は「働き方の柔軟性を追求したい」と考えた点:

 もし妻が妊娠をしていなかったら・・・とはいえ、転職には踏み切っていなかったと今でも思います。

幸いにも結婚して6年目でやっと子供を授かることができました。ただ、それまでの過程の中で、不妊治療を開始してからの2年弱、子供が産まれる保証がどこにも無く時間だけが過ぎ先が見えない不安の中、肉体的にも精神的にも経済的にも、妻が自分で頑張ると決めた道ではあるものの、彼女にとっては非常に辛い時期だったと思いますし、彼女の職場にも少なからず迷惑をかけたと思います。正直、自分自身も子供をあきらめ、妻と2人で生きていく覚悟を決め、プレイングマネージャーにチャレンジすることを決めたところでした。結果、その直後の妊娠発覚からの切迫流産・・・という時期は、自分自身も本当に苦しい時期でした。

 

 社員への理解が非常にある会社なので、自分自身が会社にプライベートな現状を伝え、一時的に働き方を配慮してもらうことはできたと思います。また、組織としての仕組みも確立されていたので、仕組みの中で職場にできる限り迷惑をかけず働くにも、非常に恵まれた環境だったとも思います。ただ、今後も福岡にいる痴呆症の祖母の身のことや、妻や当時まだ生まれてきていない子供の身に何かがあったことを考えた際に(結果的に、安定期の後、切迫早産になり、妻はまた大変な時期を経験しました)、会社や事業の状況としてもすごく大事な時期だということも十分に認識している自分としては、一時的に働き方を配慮してもらったり、一時的に残業時間を減らすような配慮をしてもらうことよりも、既存の枠組みを大きく超えた根本的な働き方の柔軟性を追求する道を歩んでいきたいと思い、転職を決めました。

 

今回の転職では、「短期的には、たくさんの失うものがある」と思いましたが、「長期的には、得られる2つの方が自分にとってははるかに価値がある」と考え、多くのメリットを捨て、2つのメリットを得るため、転職を決めました。

 

2016年3月某日